医師として働いていた頃に若いがん患者の死を看取り、遺伝性がんに興味を持った。米国ユタ州の家族性大腸腺腫症の家系を利用した逆遺伝学による原因遺伝子の発見を目指したのが、外科医から遺伝学・ゲノム学研究者となるきっかけだった。
幸運なことに、染色体の母方由来か父方起源かを区別できる多型性 DNA マーカーを単離するチームを任され、これがVNTR マーカーの発見につながり、「逆遺伝学」の確立に貢献した。
そして、1990 年に開始された国際ヒトゲノム計画につながった。
しかし、この時点では、将来の医療におけるゲノム研究の重要性は日本では過小評価されていた。日本政府がミレニアムゲノムプロジェクトを開始し、SNP、バイオバンク、GWAS(ゲノムワイド関連研究)の分野で急速に世界に追いつき、日本はGWAS研究において世界をリードする立場にいた。
さらに、その後の技術革新により、ゲノム情報は医学・医療に欠かせないものとなり、ゲノム医療はプレシジョン・メディシンにおいて重要な役割を果たしている。ヒトゲノミクス研究の歴史について議論し、さらに今後10年間における免疫ゲノミクス・免疫療法の重要性について紹介します。